「戦後」の終わりにむけて-小沢一郎の見据える未来
おいおい、一体どうなってるんだい、この今のネット言論界の惨状は?
小沢一郎が現実路線の方向に舵を転回した判断は、まったく正しいだろう?
たしかに、昨年までであったら、安保法制廃止の野党共闘で安倍政権打倒を目指すのが、われわれにとっての唯一最善の策であったろう。しかし、今年に入ってから以降、情況は大きく変わってしまった。
理由は幾つかあるだろうが、最大の理由は、一触即発の朝鮮半島緊張情勢というものが、形成されてしまったという事だ。
今の安倍政権が成立したのが2012年の年末だ。その後安倍政権は2013年12月の特定秘密保護法を皮切りに、2015年9月に本丸の安全保障関連法、そして2017年6月にはテロ等準備罪法と、宗主国様の指令通りに、着々と戦時体制にむけての法整備を進めてきた。
その一方で、2014年2月にCIAがウクライナをクーデターで乗っ取ったが、そのCIAウクライナがCIA北朝鮮に弾道ミサイル技術を横流ししたようで、北朝鮮のミサイル技術が、飛距離・精度ともに、短期間で飛躍的に向上してしまった。
なかでも、8月29日と9月15日に立て続けに発射され、日本上空を通過した中距離弾道ミサイル(IRBM)には、それがグアムを射程にとらえているという科学的意味と同時に、別の含意が読み取れる。
「あんなものは、安倍自民党の支持率を上昇させる為の、彼らからのプレゼントだよ。」と左翼・リベラル系のネット論者は一笑に付そうとするが、それはそうであると同時に、裏を返せば、「この期に及んで、安保法制廃止の政権など、絶対に許しませんよ。」という彼らからのサイン(=警告)とも受け取れるのだ。
実際、北朝鮮問題が喫緊の国際課題として討議されている今このタイミングで、もし安保法制廃止の野党連合政権が出来たら、政治はたちまち大混乱に陥ることになる。
それをわれわれは8年前、2009年の鳩山民主党政権の時に、一度経験している。鳩山由紀夫政権は、米軍基地の辺野古移転に反対を表明したことで窮地に陥り、たちまち行き詰まってしまった。マスコミの総攻撃を受け、わずか9カ月足らずで退陣に追い込まれた。
今回はあの時以上のマスコミの大攻勢と混乱が予想されるが、それに対する備えと対策は、準備していたのかい?アメリカと韓国を説得出来るだけの交渉材料は、用意しているのかい?
それだけで済めばまだよい。もし今このタイミングで安保法制廃止政権が出来れば、その場合、北朝鮮から日本本土に向けて弾道ミサイルが飛来してくる可能性が飛躍的に高まることを、われわれは覚悟しなければならないだろう。
なぜなら現行の安保法制で朝鮮半島に有事が発生した場合、自衛隊は法制に則って米軍の後方支援に駆り出されることになるだろうが、もし安保法制を廃止した場合、米軍に協力しない日本には、その“ 代償 ”が求められるだろうから。
その場合の日本国の被害は、前者の場合の被害よりも、遙かに甚大なものとなることが想定される。あるいは実際に廃止せずとも、内閣が安保法制廃止方針を表明した時点で、同様の危険(ミサイルの飛来)は高まるだろう。
だから小沢一郎は、先の民進党の代表選で共産党との安保法制廃止共闘の継続に積極的だった枝野幸男ではなく、前原誠司を側面支援して勝たせることによって、われわれ日本国民を当面最大の危機から、救ってくれたことになるのだよ?
こんなことも分からないから、あなたたちネット左翼言論人は、あなたたちの常日頃もっとも軽蔑し冷笑しているネトウヨ連中から、「だからパヨクはダメなんだよ。」と罵倒されるんだ。
もちろん、今のようにトランプがバカを演じ続けてくれているうちに、アメリカが徐々に求心力を失い、ロシア・中国主導で北朝鮮問題がソフトランディングする可能性は大いにあるし、そうなってもらいたい。しかし現実問題として、軍事オプションの可能性を前提に日米韓が連携を深め、合同軍事訓練を繰り返している実情がある。
選挙に勝つ為には共産党の組織票は魅力的だ。しかし安倍政権を本気で打倒しに行こうと思うならば、志位和夫さんには悪いが、今回はどうしても共産党とは手を切って、別の道のり、逆コースからの政権奪取を目指さなければならない、実に困難な情況だったのである。
だから、“ 踏み絵 ”も、どうしても必要だった。“ 踏み絵 ”は、政権を担う資格を有するか否かについての、宗主国様に向けての、セレモニーだ。なにしろ今まで安保法制に反対を唱えていた人たちが、大半なのだから。
あの“ 踏み絵 ”に皆が感情を逆撫でされ、舛添降し攻勢から始まったテレビワイドショーの不愉快な“ 小池劇場 ”に堆積していた不満(もちろんオレもそのひとりだ)が一気に噴き出した形で、「これはヒドイ!騙し討ちだ!やはり小池百合子と希望の党の目的は野党潰し・リベラル潰しだった!」となり、今のこのネット言論界の状況があるわけだが、あの“ 踏み絵 ”でオレは逆に、小池百合子は本気かもしれない、と考えるようになった。
なぜなら今前門には北朝鮮があるが、後門にはムサシが控えているからだ。臨時国会冒頭解散の翌9月26日、NHKは『ニュースウォッチ9』の番組中、わざわざ株式会社ムサシの紹介をしていた。これがもうひとつのサイン(=警告)だった。
このサインに応える為には、それによりどんなに激しい世論の反発を招くことが事前に予測されたとしても、どうしても“ 踏み絵 ”は、実行されなければならなかったのだ。
いくら穏便平和に政党合流を実現してみせても、宗主国様から「この政党には資格無し」と判断されてしまえば、「野合」だの何だのマスコミにいいように難癖つけられて、結局は最後の関門ではじかれてしまうからだ。
彼女が単に野党共闘潰しのエサとして動いていただけの人形ならば、そちらの方がはるかに簡単で、効果的な方法なのだから、そのようにしただろうし、新興安保・改憲勢力として台頭するのが目的なら、そもそも民進党議員を受け入れずともムサシ選挙である程度勝てた訳で、一挙両得のようにも見える今回の荒技が、どこか矛盾をはらんでいるようで、そこには不確定要素としての彼女自身の野心が起因しているとしか思えない。
小池百合子は本気だ。本気で安倍晋三から政権を奪いに行っている。小沢一郎が勝負に出たのだ。
ネット右翼(=安倍晋三)とネット左翼(=枝野幸男)が、双方から小沢一郎(=希望の党)の足を引っ張り合っている。小沢バッシングは見慣れてきたつもりだったが、これはかつて見たことのない、異様な光景だ。ネットからは安倍批判がほとんど消えてしまった。
たしかに枝野幸男は善人なのだろうし、今回はあまりにもドラマティックな展開だったので、同情を集めているのも分かるが、彼のポジションは所詮いわゆるガス抜き以上のものではない。
われわれは独立国家ではないのだから、常に自分の信じる正義に向かって目くら滅法に突き進んで行っても、それが必ずしも良い結果を招くとは限らないということを、自覚することだ。
困難に突き当たるたびに、常に次善の策を探しながら、しぶとく生き抜いていくより他に無い。憲法改正問題にしたって、自民党内でも異なった考え方があるし、ましてや希望の党など出来たばかりでほとんどまだ何も決まっていないような状態なのだから、与野党間でノラリクラリ議論しながら、当面は何も決めない、という方策だってあり得るだろう?
どうやら現時点で、希望の党が誰を首班指名するのか、しないのか、というのが勝負の分かれ目、焦点となりそうである。
天地開闢の後に、虚空の中に一物有り。形葦牙(あしかび)の如く
『類聚神祇本源』
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