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2013年12月

2013年12月31日 (火)

臨界

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何だか知らないが、ヘラヘラ、ヘラヘラ、笑っている。

NHKの腐敗振りが、臨界を越えてすさまじい。彼らを見ていると、今この国のさまざまなものが破局的に崩壊しつつあるという事が、逆説的に良く分かる。



緩慢に、無節操に、そして執拗に、一年中、ヘラヘラ、ヘラヘラ、笑い続けていた。笑っていない時には、親を喪った子供や、子供を喪った親のような「可哀想な人」を日本中から探し出しては、その人の処に行き、泣いてみせる。どちらにしても同じ事である。現実を冷徹に見つめ、未来を情熱的に思考・創造して行こうなどという気持ちがサラサラ無いどころか、そういう人がいたら積極的に足元を掬うのが、彼らの本分だ。

笑いは、安倍政権のスタートとともに、年初から始まった。春先には、民放各社も同じではあったが、NHKの報道番組の画面には、株価の上昇に頬を緩ませる個人投資家や、円安で利益増に鼻の穴を膨らませる自動車製造業者、それに舶来高級時計等の売上げが伸びていると嬉々として報告するデパートの高級品売り場の店員等の笑顔が、ひっきりなしに流れ続けた。「われわれのところには(景気の好転が)下りて来ているという実感はまだ無いねえ・・・」というタクシー運転手のこれもまたやや力無い笑顔。執拗に繰り返される強迫的な笑いの洪水のなかで、感覚は麻痺し、すべての他の重要懸念事項は後方に退いて行く・・・。

否、もうひとつ肝心な人達を忘れていた。しかしNHKは忘れていなかった。通常国会が閉会し、さあこれから参院選だというその日、6月26日だが、この報道機関として上半期の安倍政権の総括検証をすべき日にNHKの『ニュースウォッチ9』が赴いたのは、この半年余りの俄か投機ブームによって手数料収益の最大級の大幅増益を得た証券会社の社員の処なのであり、「ボーナスがたっぷり貰えそうなので、これで娘を希望の私立に入れてあげることが出来そうです・・・」と涙ぐむばかりに喜んで頭を下げる証券会社のオトウサンと一心同体になって、この“公共放送”の報道番組の取材キャスターは、共に頷き合うのである。



人間には素直さが大事だと云う。ならばここでひとまず彼等の流儀に沿って、その他のすべての重要懸念事項を忘れてみることにしよう。すなわち安倍政権がこのNHKを始めとするマスコミの好意的な笑いの防御網の下で進めていた、憲法96条の先行改正策の姑息さや、それに続くだろう大幅な国家至上主義的な憲法改正、集団的自衛権と武器輸出の容認化、TPP交渉への参加と、経済特区という名のプレTPP世界への策動 (2002年度版年次改革要望書における「構造改革特区」設立要求の実現)、それと同調する竹中平蔵流の「雇用流動化」の促進(=更なる非正規雇用の規制緩和)、消費税増税の実行と社会保障改革のなし崩し的形骸化、辺野古埋立てと原発再稼動への舵取り、トルコのような地震大国への原発の売込みなど、すべて一時的なモルヒネ効果による今この場の経済の好転さえ実現出来るならば、それに比べて取るに足らない瑣末な事項だと考えてみることにしよう。

彼らが常日頃それをわれわれに執拗に押し売りして来る通りに、彼らの笑いは安倍晋三の悪政を隠蔽し、参院選で自民・公明に安定多数を確保させる為の後ろ暗いプロパガンダ・キャンペーンの笑いなどではなく、彼らのわれわれに対する純粋な“善意”から発せられているのだと、最大限彼等の側に情状酌量して考えてみよう。彼等は彼等の“善意”から、われわれにとって最も重要だと彼等が考えるところのものを優先してわれわれに伝えて呉れているのだ、と仮定してみるのである。事実そう考えている人が世の中には結構多いのだ。なにしろ彼らはわれわれ日本国民に対する半強制的な受信料の徴収によってその身分を保証されている、“公共放送”なのであるから。

最大限彼らの側に立てば、彼らの“善意”はこう解釈できるだろう。つまり彼等はわれわれの“マインド”を変えてくれようとしてくれていたのだ。本当は暗くても、つまり円安による一部輸出企業の利益増加の一方で、輸入原材料や燃料の高騰で中小企業や一般家計に負担増がじわじわと重く圧し掛かっているという事実や、“異次元の金融緩和”とそれに伴う円安で国内外から市場に溢れたマネーが、株式や土地などの資産価格を押し上げ資産家の懐を暖めた一方で、相変わらず労働者の基本給は17ヶ月連続で減り続け、非正規雇用者の割合も増え続けていたとしても、明るい気分を演出して富裕層やNHKの中心的視聴者である高齢者層の財布の紐を緩めさせれば、その波及効果がいずれ日本中のすみずみにまで行き渡るかも知れないと、時代錯誤のトリクル・ダウン理論を盲目的に信じて、われわれの“マインド”を率先して鼓舞する為に、好況に授かっている人達を世の中から選び出しては、その笑顔をわれわれの前に届け続けてくれていたのだ、と。

しかし自動車産業だって、別に販売台数が伸びていたわけではない。トヨタの2013年4月~9月期の中間決算で、営業利益は前年同期比81%増の1兆2554億円と発表され報道各機関を賑わしたが、販売台数は前年同期比で4万8000台少ない446万8000台と微減にとどまっている。他社も大体同じような内実である。円安で一時的に利益が増えても、販売台数が増えなければ、設備投資や雇用増加や持続的な賃上げには繋がって行かない。

気弱に笑っていたタクシー運転手は、比較的富裕層の多い首都圏の人だったであろうから、あるいは多少は恩恵を受けているかも知れない。地方の人であったなら、それも無縁であろう。賃上げすればNHKの取材班が揉み手で会社まで飛んで来てくれるので、その広告効果を見越してベース・アップする企業も幾らかはあるだろうが、それでなくとも270兆円もの内部留保を溜め込んでいた大企業が、俄かに大判振舞いをすると考える方が不自然である。増税に社会保障費負担増と、今後消費マインドを冷え込ます要素には事欠かない。NHKが今後もなお“善意”の笑いをお茶の間に振り撒き続けようとするならば、彼等は嘘つきということになる。



株価の右肩上がりも落ち着いた参院選の前後には、福島第一原発における深刻な汚染水漏れの状況が次第に明らかになり、心ある国民はもとより世界中の人々の胸を痛ませたが、善意のNHKはここでも「気にするな」とわれわれに心強いメッセージを送り続けてくれた。

6月19日、東京電力は海から27m陸側にある2号機タービン建屋東側の地下水から高濃度トリチウム(法廷許容限度の30倍以上)、ストロンチウム(同8倍以上)が検出されたと発表。24日には井戸から北150メートル地点の港湾内の海水からも観測開始以来最も高い濃度のトリチウムが検出され、濃度は上昇傾向にあるとしたが、当初東電は海洋への汚染水流出の可能性は否定し続けた。しかしその後も次々と深刻な状態を告げる観測結果が明らかになり、安倍自民圧勝の参議院選挙翌日の7月22日、東電は一転汚染水の海洋への流出を認めることとなる。

8月7日、資源エネルギー庁は1-4号機に1日当たり約1000㌧の地下水が流れ込み、このうち約400㌧が建屋に流入。残り600㌧のうち300㌧がトレンチ(坑道)内の汚染源に触れ、高濃度の汚染水として海に放出されているとの試算結果を公表した。その後もタンクからの水漏れが発覚するなど東電の対応は後手後手に回り、国内外から批判の声が高まる中、この問題に対するNHKの終始一貫した報道姿勢として象徴的だったのが、9月3日のやはり『ニュースウォッチ9』であり、この日はようやくにして政府の原子力災害対策本部で安倍晋三が「政府が前面に立ち、解決にあたる。必要な財政措置を講ずる」と汚染水対策の基本方針を決定・発表した日だったのであるから、国内外の多くの人々が最注視していたこのニュースに当然多くの時間を割いて内容検証に当たるのが公共報道機関としての務めと思われたが、なぜか番組は冒頭から延々と相変わらずの“アベノミクス”礼賛報道に時計の針を振り戻し始めたかと思うと、唖然としているのもつかの間、「歌舞伎新世代の挑戦」と題したやはり長々とした芸能ルポがその後に続き、視聴者を見事に平穏安穏とした空間に寛がせてくれるのである。

結局その日の『ニュースウォッチ9』は最後の30秒ほどのスポット・ニュースでこの会議における安倍の顔を映しただけで、内容にはまったく踏み込まなかった。多くの専門家から疑義を唱えられている鹿島の凍土方式遮水壁についても、故障を繰り返している東芝のALPS(アルプス)についても、「金は出す」と決めただけで、その実効性にはいまだ不透明な点が多いというのにだ。しかし「気にするな」と励ましてくれるのであれば、内実についてシッカリ取材・報告した上でそうしてくれないと、いかな御人好しなNHK愛好家諸氏でも、さすがに不安を覚えて来そうなものである。いかな『みんなの歌』で回転寿司屋の歌を歌ってくれて、「寿司屋に行こう。魚を食べよう」と励ましてくれてもである。



すでにこの時点で、善意のNHKという仮定はものの見事に崩れ去り、報道機関という大義名分さえもあからさまに脱ぎ捨てて、際限無き後退と麻痺の澱みの中へと彼等が逃げ込んでいく可能性は充分に予見されたが、この汚染水問題でも頑なに国会を開かなかった安倍晋三が、10月15日にようやく召集した第185臨時国会は、50数日間という短い会期予定の中で国民生活にとっての重要法案が目白押しであり、報道機関にとってもその存在意義を問われるまさに全神経を集中すべき期間であったのだが、春先の投機熱も収束しつつあるなかで、さてどうするのかなと思って観ていたら、NHK夜9時の“報道”番組『ニュースウォッチ9』は、とうとう国会審議の模様をまったく取り上げなくなった。

たとえば10月17日。この日は衆議院本会議の三日目だ。初日の安倍晋三の所信表明演説に対しての野党各党の代表質問が行われた日であり、公明党井上義久45分、みんなの党渡辺喜美40分、日本共産党志位和夫33分、生活の党鈴木克昌26分の順に、それぞれ安倍政権に対する各党の基本的意見・疑義を公的に述べた、つまりは今国会でこれから何が問題になっていくのか、何が争点となるべきなのかを国民が知る為の、いわば国民にとっても報道機関にとっても、重要な問題点洗い出しのスタートとも位置付けられる日だったのだが、“公共放送”NHKの“報道”番組『ニュースウォッチ9』は、なぜかこれを視聴者にまったく伝えようとしないのだ。

その日、衆院本会議の各党代表質問を無視するにも値するような大きなニュースが幾つもあったのだろうか?

臨時国会が始まった日の夜更け、10月16日未明に、台風26号の直撃による伊豆大島の土砂崩れが発生し、多くの方々が犠牲となられた。冒頭その被害状況を伝えるニュースの後、福島県で沿岸漁業の試験操業が開始されるというニュースに続き、「次は国会のニュースかな?」と思って観ていると、“企業で夜の残業を控え、仕事効率の良い早朝出勤にシフトする動きが拡がりつつあるようです。”云々という陽気な掛け声とともに、画面はなぜか安穏とした空気のオフィス街に飛び、「早朝出勤にしてから時間を有効活用できるようになりました♪」という大手商社マンや、職場で朝のラジオ体操に興じ、体操のオネエさんからスタンプを押してもらって喜んでいるIT企業の社員達の笑顔が、次々に映し出される・・・。

不穏な気配を感じつつなおも観ていると、次に始まったのは数日前に運行を開始した寝台特急ななつ星の乗車レポート。最高クラスで一人あたり50万円以上もするという豪華クルーズの旅を楽しむリッチな中高年旅行者達と、相乗効果に期待する観光業者達のこれまた笑顔、笑顔、笑顔。そして“「嵐」の松本潤さんへの単独インタビュー”へと雪崩れ込み、それでその日の“ニュース”はお終いである。

翌週からは各委員会での審議が本格的にスタートする。NHKの不穏な笑いは止まらない。10月22日、この日はやはり予算委員会の本格議論の二日目で、民主・維新・みんな・共産・生活の党各党の質問が終日行われた日なのであるが、伊豆大島から一時避難する人達への取材ニュースと、ホテルの食品表示偽装関連のニュースを伝えた後、やはり“ろうそくの使用方法に意外な盲点が見つかりました。”云々という話なぜかが始まり、「ろうそく火災に気をつけましょう。」と注意を喚起された後、視聴者はまたしても街頭に飛ばされ、「この秋コンビニからホット炭酸飲料が新発売されます。お味はどうでしょう?」と、遂には“公共放送”の“報道”番組による企業宣伝までが堂々と始まり、唖然とさせられるのである。炭酸飲料の製造工場にまで出向いての長々としたPRの後、最後は習字イベントの話題になり、「毛筆で伝えよう、感謝の気持ち。」とヘラヘラ笑って終了。結局この日も国会はスルーである。

これ以上書き綴るのも馬鹿馬鹿しくなってくるが、その後も臨時国会開会中の50数日間、ずっとこんな調子だったのである。周知の如く、特別秘密保護法案に関しては委員会で担当大臣が支離滅裂な答弁を繰り返し、その法案のずさんさと恣意的運用の危険性が次々と明るみになっていたが、この模様もまったく伝えないし、そうかと思えばアヤシイ言語学者だかなんだかを引っ張り出してきて、「安倍首相の答弁には自信が漲っていますね」と愚にもつかないヨイショ・コメントだけには欠かさないのである。

報道の自由の侵害を指摘される特別秘密保護法案に対して沈黙し続けたNHKは、すでに自分達が報道機関で在ることを放棄した事をあらためて内外に知らしめたようなものだが、高級放送官僚の身分である彼等がこの法案に無関心である事はある意味自然な反応であるとしても、民主党政権時代から「社会保障と税の一体改革」なるものについて、その重要性と必要性と喫緊性、さらには与野党協議の意義についてまでもを、絶えず先頭に立って政府広報よろしく国民に向かって声高に説いてきた彼等が、その中間クライマックスともいうべき「社会保障制度改革プログラム法案」の審議が厚労委員会で紛糾し、自民・公明が強制動議で審議を打ち切り強行採決した11月15日、そして法案が衆院で可決された11月19日ともに、その中核番組『ニュースウォッチ9』でこれについて唯の一秒も触れないというのは、すでに彼等が報道機関では無いとしても、人間として許されることなのであろうか?

「社会保障制度改革プログラム法案」では、70~74歳の医療費窓口負担が1割から2割に引き上げられ、年金支給開始年齢も引き上げを検討など、「改革」とは名ばかりの負担増と保障費削減だけが目に付く。10月1日に先行決定されていた消費税税率の8%への引き上げと照合するに、まさに予想されていた通りの「社会保障と税の一体改革」という名の単なる増税に帰結した事が衆目に明らかになった訳だが、この件に関する限りNHKは、強行採決の事実と法案の内容よりも阿寒湖のマリモの生態や松任谷由実へのインタビューの方が国民の“マインド”にとって重要である、などといういかなる“善意”の言い訳も通用しない。



“見ザル、聞カザル、言ワザル、嘘ダケ言イ張ル。” NHKの罪深さは、そうした彼らの姿勢が、テレビ画面を通じて、視聴者にも蔓延していくという事だ。昔テレビドラマで流行した「腐ったミカンの方程式」そのものである。インターネットやSNSの普及により以前より政治・社会問題に精通し積極的に発言する人達が増えた一方で、そのような問題に無関心な人達はただ無関心なだけに留まらず、そうした問題に触れられるのを“怖れる”ようにすらなって来ているのである。NHKよろしく、「昨日の国会でさ・・・」と話を振った途端、なぜか“聞こえないフリ”をして、「マリモがさ・・・」とか「松任谷由実がさ・・・」と強引に話題を変えようとする人達が、最近、それも大の大人の男などの中に、実際にいるのである。

「ホット炭酸飲料がさ・・・」 内政問題には一切の無視を決め込む一方で、近隣諸国への不信や反感を煽る報道には、殊更熱心である。内政が腐敗すれば腐敗するほど、この傾向は今後よりエスカレートしていく可能性が高いだろう。



人間は、どこまで腐る事が出来るのか?

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