マスコミスライムの作り方
先週3月15日米韓FTAが発効になったが、その際のテレビニュース、オレが観たところではNHKもテレビ朝日も一応韓国国内でいまだ抗議運動が根強い事を紹介してはいたが、その論調は従来の「農業関係者を中心に・・・」というものの延長であったし、テレビ東京はそれすら無しに「国際社会は韓国をうらやましがっている」という李明博大統領の談話を報じていた。
そのなかでも『報道ステーション』の古館伊知郎の弁はやはりふるっていた。
昨年11月のハワイAPEC直前時にはあれほどTPPについて国内議論したのに、喉元過ぎれば熱さを忘れるというのが日本人の悪癖なのか、われわれマスコミも反省しなければならないが、これからもこの問題については継続して注視していかなければならないですね云々。
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昨年秋、インターネットを発火点にまさに白熱したTPP論議が国内で沸騰していたさなか、街頭の抗議集会や与党内検討会議の動向を坦々と伝えるのみで、TPPそのものの内容についてはひたすら沈黙するようだったのは、古舘も所属する当のマスメディアだったはずである。
「あれほどTPPについて議論したのに」というなかに勝手に自分達を含めるのはいかがなものか。しかも古館は野田首相が「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と表明した直後の放送でも、おそらく番組に抗議の電話が殺到していたのだろう、「今後わたしたちはTPPの詳しい内容についても皆様にお伝えしていきますから」と弁解風に述べていたのだが、その後『報道ステーション』で21項目あるというTPPの交渉分野の詳細、及びその問題点について触れていたことは、オレが観ていた限りでは只の一度もない。人間の「忘却」という特性に過度に期待して、喉元過ぎれば何とやら、と厚顔無恥に振舞っているのは誰なのか。
古館は最近放送された震災一周年の『報ステ』特番でも何か殊勝な事を述べていたようだが、本気で「原発村」に食い込んでいく気概があるのなら、九州電力のやらせメール問題で第三者委員会の調査報告書が古川佐賀県知事の関与を指摘した時に、何故もっと激しく知事の責任を追及しなかったのか?と言いたい。アソコを切り崩せていたら、この国の統治機構全体に根を張っている「原子力村」にはそれこそ大きな打撃だった筈である。
「原発村」に挑むということは、何よりも先ずいままでの権力装置としての己自身の在り方を、視聴者の眼の前で猛省するということだ。それ無しにいくら格好のいい事を言っても、単なる都合のいい自己保身と見做されてもしょうがないだろう。
オレとしてはこの“上げ底肉”のようなドーラン塗り過ぎ口先男が毎晩テレビ画面に出てくることは、子供の教育上非常によろしくないというのが従来からの判断であり、それを変更する理由は今のところ無い。
韓国のFTA反対運動では、FTAの絡みだけではないのかも知れないが、大手通信社とテレビ局の労働組合員ストライキにまで展開しているようだ。これも日本のマスコミは一切報道していないので、詳細はよく分からない。日本農業新聞の記事が伝えているのみである。22日になってMSN産経ニュースがようやくこの件を報じたが、FTAには一切触れず“伝統的な”政治主義運動と断じている。
米韓FTA反対派 廃止訴え闘争突入 報道労組 ストで同調 韓国
(日本農業新聞03月16日)
米国との自由貿易協定(FTA)発効を受け、韓国の野党や韓米FTA阻止汎国民運動本部(阻止本部)は15日、ソウル中心部の光化門広場で記者会見を開き、米韓FTA廃止の闘争に突入すると宣言した。4月の総選挙、12月の大統領選挙を控え、中長期的に闘争運動を続ける構えだ。大手メディア労働組合員の無制限ストライキも加わり、運動は一層激化しそうだ。
阻止本部は「(米韓FTAは)通商条約ではない。投資家・国家訴訟(ISD)条項など公共政策や国家主権を侵害する屈辱的な条約だ」と強く批判し、「廃止闘争に突入する」と宣言。米韓FTAの阻止闘争は2006年から始まり、すでに7年目を迎える。
闘争運動では15日、ソウル繁華街で米韓FTA廃止ろうそくデモを開催。16日は、大手テレビ局などの労働組合が主催するコンサートで米韓FTA廃止を訴える。25日は野党支持者を中心とする進歩陣営大衆大会を開く。4月の総選挙、12月の大統領選挙に向け、与党候補者の落選運動を展開する。
また、「不公正な報道をやめろ」をスローガンに通信社最大手の聯合ニュースと大手テレビ局KBS、MBC、YTN、国民日報の計5社の労働組合員が無制限ストライキに入った。大統領や与党が選出した社長が、政府・与党寄りの報道をするよう社員に圧力をかけたことが背景にある。
特にMBCの場合、事実に基づき米韓FTA番組を制作したが、政府・与党の意向に反するとして放送中止となった。各社とも組合員以外で放送や新聞発行を続けるが、厳しい状況だ。
・韓国の反対 日本にも影響 農水副大臣
農水省の筒井信隆副大臣は15日の会見で、同日発効した米韓FTAについて「(日本国内の)TPPの国民的議論の際に、韓国の経験が参考になる。(TPP交渉参加を)慎重に考えていかなければならない、という方向で影響が出るだろう」と述べた。 (転載了)
岩上安身氏が3月19日の文化放送『夕やけ寺ちゃん活動中』でこの問題に言及している。
UStream動画
(9分過ぎから・・・小沢裁判捜査報告書捏造問題について)
(34分過ぎから・・・米韓FTA、TPPについて)
韓国のテレビ局の社員は、以前にも新聞社や大企業の地上波放送局の株式所有を認めるメディア関連法案修正案に反対してストライキするなど、ストライキは度々発生しているようだが、社会の木槌たるジャーナリストとしての自負において、日本のクズマスコミよりはかなりマシなようである。
[ニュースアイ] TPP高まる危機感 各党議論を本格化 政府説明根拠崩れる
(日本農業新聞3月16日)
環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題をめぐり、民主、自民両党をはじめとする各党が議論を本格化、対処方針の提示などに乗り出した。交渉参加国は「90~95%の品目の関税即時撤廃、残る関税も7年以内の段階的撤廃」などの考えを示し、「交渉次第で例外を確保できる」とする政府の主張の根拠が崩れてきたためだ。「高過ぎるハードルの実態」(与党幹部)が明らかになるにつれ、交渉参加に慎重、反対の声が与野党で広がりそうだ。
「医療(保険制度)について言えば、今の政府からの情報はうそだ」。民主党の櫻井充・経済連携プロジェクトチーム(PT)座長代理は、JAグループが13日に東京都内で開いた「TPP交渉参加断固阻止全国要請集会」の各党討論会で語気を強めてこう述べ、政府に情報開示の改善を求めたことを明らかにした。
政府はこれまで「TPPで公的医療保険制度の廃止は議論されていない」との説明を繰り返してきた。しかし、米国は2001年から始めた規制見直しの対日要求の「年次改革要望書」で、病院の株式会社化の認可などを求めてきた。櫻井座長代理の怒りの背景には「過去の経緯を踏まえず、交渉参加に都合が良いような情報だけを示す政府姿勢への疑問」(民主党幹部)がある。
その端的な事例が、「例外確保は交渉次第」との希望的観測を掲げてきた政府説明だ。政府は先週、米国を除く交渉参加8カ国との事前協議で得た情報を公表したが、関係国は例外品目を設けることに否定的で、厳しい情勢であることを認めざるを得なくなってきた。米韓FTA(自由貿易協定)で論争の焦点となっている投資家・国家訴訟(ISD)条項についての政府の説明もまだ不十分なままだ。
こうした状況に野党も危機感を募らせる。自民党は「例外なき関税撤廃を前提とする交渉参加には反対」することを柱とする判断基準を作り、例外確保の見通しなどを国会などで厳しく問い質す方針だ。共産党や社民党は交渉参加に前のめりな政府姿勢を批判、対応方針を決めていない公明党も慎重姿勢を強め始めている。
政府は来週、民主党の経済連携PTで、TPPで対象となっている医療や食の安全を含めた21分野全体の交渉状況を明らかにする予定だ。「不都合な真実も含めて情報開示と国民的な議論をどこまで徹底できるのか」(自民党農林幹部)。政府の姿勢があらためて問われることになる。
・大枠合意へ急ぐ米国 今後の予定と課題
11月に大統領選を控えたオバマ政権は、5、7月のTPP交渉で大枠の合意を得ようと、交渉参加国との協議を急いでいる。5月の第12回交渉会合は米国テキサス州のダラスで行い、7月の第13回交渉会合は米国内かニュージーランドで開く予定だ。
交渉を急ぐ米国の狙いは(1)米国に都合のいい貿易ルールの大枠を早期に固めることで、選挙の資金源である大企業にアピールすること(2)日本などが新たに交渉に参加する場合に合意内容を丸のみさせること――とみられる。交渉参加国の間では「新規の交渉参加国は9カ国が合意した貿易ルールを変えることはできない」との共通認識がある。今後、日本が交渉に参加してもルール作りに参加できる余地は少ない。
また日本などが途中参加することで交渉が長引いたり、TPPの自由化レベルが下がったりすることを嫌う交渉参加国は多い。日豪経済連携協定(EPA)交渉で日本が農業の重要品目の自由化を認めないことから、オーストラリアは日本の交渉参加に同意していない。
・関税撤廃 7年以内
TPP交渉参加国が目指す自由化レベルは下がるどころか、高まっている。政府は今月上旬、交渉参加国との事前協議で「全品目の90~95%の関税を即時撤廃し、残る関税も7年以内に段階的に撤廃すべきとの考えを支持する国が多数ある」ことを明らかにした。
重要品目の関税撤廃は10年以内に行うことが原則だったが、関税撤廃までの期間は交渉を通じて短くなっている。外務省幹部は「重要品目の関税撤廃は最終的には交渉次第」などと例外が認められる可能性を示唆しているが、TPP交渉の現実を踏まえない希望的観測でしかない。この他、米国が9月までに大枠合意を目指す貿易ルールに盛り込む可能性が高いものとして、外国の企業が投資先の政府を訴えることができるISD条項、薬価を引き上げる要因となる知的財産保護の拡大、日本郵政の保険事業に制約を課す国営企業の規律、漁業補助金の廃止などが考えられる。
野田佳彦首相は5月の大型連休にワシントンを訪れたい意向だ。さらに同18日からは主要8カ国(G8)首脳会議も米国で開かれ、日米首脳会談を行う機会となる。その際に万が一、野田首相が正式に交渉参加を決断したと表明すれば、それは米国の法外な要求や、国益に沿わないTPP交渉の合意内容を丸のみすることを意味する。
(転載了)
米韓FTA 現地で問題点確認 岩手県の訪韓調査団 識者20人と意見交換
(日本農業新聞03月22日)
岩手県のJAグループや県生協連などでつくる米韓自由貿易協定(FTA)の訪韓調査団が21日、韓国での4日間の調査活動を終えた。同FTAに反対する生協や農協、市民団体の他、20人近い識者らと意見を交換し、15日に発効された同FTAの問題点を確認した。
通商条例に詳しい宋基昊弁護士は、韓国が米国とのFTA交渉に入るための先決条件として、牛肉や自動車、薬価などの自由化を受け入れたことを問題視。交渉前に大きく譲歩したため、少しでも挽回しようとして FTA交渉から抜け出せなくなり、結果的に一層の自由化を受け入れてしまったと、敗因を分析した。
意見交換では、韓国政府がFTAの本質が国の主権を脅かす危険な点を国民に知らせることなく、発効に至ったとの報告を受けた。TPP参加に前のめりな姿勢を崩さない日本政府について「状況が同じ」との指摘も相次いだ。
調査団の副団長を務めるJA岩手県中央会の高橋専太郎副会長は「日本はTPPで例外品目をどうするかではなく、参加する前に阻止することが極めて重要になる」と一層の警戒感を募らせた。
米韓FTAに盛り込まれた投資家・国家訴訟(ISD)条項では、韓国の識者が学校給食を例に説明。米国企業に提訴されれば、自治体が地元の安全な農産物を提供することができなくなり、地産地消が崩れる可能性が高い。医療の自由化や郵政事業の制限など公共性の高いサービスも悪影響を受けることを確認した。
調査団長を務める岩手県生協連の加藤善正会長は「TPPを農業だけの問題にとどめず、消費者の暮らしが脅かされることを正確に伝え、地方から反対運動を盛り上げる必要がある」と訴えた。
調査団には「TPP等と食料・農林水産業・地域経済を考える岩手県民会議」に加盟する県内51団体の代表ら22人が参加した。 (転載了)
こういうものが学校給食に出てくることになるのかね。
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「ピンクスライム」肉、米農務省は給食使用に太鼓判 ロイター3月12日
[ワシントン 9日 ロイター] 米農務省(USDA)は、通称「ピンクスライム」と呼ばれることもあるアンモニア水で防腐処理された加工肉について、学校給食で使用されるに当たっても安全性に問題はないとの見解を示した。
オンライン新聞のザ・デーリーは先に、水酸化アンモニウムで一部防腐処理された牛肉3200トンが今春に学校給食として出されると報じていた。
米農務省は声明で「USDAが購入する牛ひき肉はすべて、最高の食品安全基準を満たさなくてはならない」と指摘。牛ひき肉の安全基準は過去数年でさらに厳格化しており、「われわれが安全に自信を持つ肉しか市場には流通していない」と説明した。
ピンクスライム肉をめぐっては、有名シェフのジェイミー・オリバー氏らが問題を取り上げたのがきっかけで、消費者の間でも注目されるようになった。米ファストフード大手のマクドナルドは先に、USDA認可済みのアンモニウム処理肉のハンバーガーへの使用を中止している。
一方、USDAと学校当局は、学校給食に使う肉として、サウスダコタ州のビーフプロダクツ・インク(BPI)から、「上質赤身加工牛肉」に分類される同加工肉の購入を計画している。USDAによると、全米学校給食プログラムとして買い上げる牛ひき肉5.1万トンのうち、BPIの製品は約6.5%を占めるという。